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ケネディクスが被買収・非上場化を選ぶ理由

不動産業界を担当して20年以上経つ私には、ケネディクスという会社は非常に思い出深い、唯一無二の企業だ。今般、三井住友リースに1200億円で買われ非公開化する(上場を止める)、という報道が出た。

 

”え、なんでリース会社がケネを?”ちょっと良く分からない。最初、そう思った。

シナジーがあるのかもよく分からない。

 

私はケネディクスの歴代社長、トップと10年以上の長期に亘り対話を続けてきた。

リーマン後の大ピンチの時も、「不動産を保有しない、保有は全てリートに」の宣言の時も。 

初代本間社長、宮島現社長(元ケネオフィスリート社長)、投資顧問の田島現社長、・・・数十人の同社グループの方と対話をしてきた。時に非常に厳しいやり取りを交わしてきた、私にとっていわば戦友のような企業なのだ。

 

独立系の有力不動産AM(アセマネ)企業、唯一の生き残り企業だった。

アーバン、パシフィック、ゼファー、リプラス、モリモト、などなど。

リーマンショックでこれらケネの同業は全て破たんした。

当時ケネディクスも継続疑義の評価を受け、瀕死ギリギリの状態だった。

本間さんの決死の2度にわたる増資で資金をつなぎ、破たんを免れたのだ。

 

また、Jリート2社のスポンサーでもある。ケネディクスは非常に堅実な経営を続けている。是非合併後もメンバーをそのまま残し、リート2社にもネガティブな影響が及ぼされないようにと祈るのみだ。

 

 しかしこの経営権を維持したままの被買収・非上場化は、ケネディクスが三井住友ファイナンス&リースに打診した、とある(リリース)。

不動産市場が激変しケネディクスにとり信用力の補完が急務だったからだろう。

また将来、資金の調達にも苦慮する事態を想定して、のことかもしれない。

ケネディクスはA格、三井住友ファイナンス&リースはAA格(JCR)。

 

経営の独立性に元々強いこだわりを持っていたケネディクスが完全子会社化、非公開化を選ぶには、相当の覚悟があったはずだ。

ただ、ケネディクスはグループ内で所有と経営の分離を徹底させる方針に転換しており、グループのリート・ファンドに物件を供給し、自らはマネジメント会社となっていたため、上場の意義が問われていたのかもしれない。

 

あるいは、第3者による敵対的買収を恐れたのかもしれない。その懸念が実際にあったのかもしれない。時価総額はたったの1500億円程度に対し、物件はケネオフィスに4000億、ケネレジに2500億、ケネ商に2000億、さらにファンドにも大量にある。AUMは2兆円だ。

 

本当の理由は1つではないと思うが、大変なことだ。コロナ後の不動産市場に対する厳しい認識が、この案件を後押ししていることは間違いない。

これからも凄い変化が不動産業界では起こりそうだ。それを十分予見させる出来事だ。

ケネディクスは、鼻が利く。先を見通す力は正確で、実力も高い。

 

不動産、つまり担保価値を持つ企業の業界なので、今後は買収による再編、が進むこととなるのだろう。

 

 

・・・これで、リーマン以前から続く独立系の中堅不動産企業が1部市場で消滅してしまった。自分の居た世界が消えてゆくようでもあり、とてもショックで寂しい。